【保存版】やる気の正体は”公式”で解明できる!子どものモチベーションを科学的に高める3つの方法
- 修士 新田
- 10月13日
- 読了時間: 10分
「うちの子、全然やる気になってくれなくて…」
「どうすれば勉強する気になるのかしら…」
保護者の方から、このようなご相談をいただくことは少なくありません。また、
「やらなきゃいけないのは分かっているけど、どうにもやる気が出ない…」
と悩んだことは、誰でも一度は経験あるのではないでしょうか。
この記事では、お子さんやあなた自身の「モチベーション」を根本から高め、目標達成に向けて継続的に行動できるようになりたい。と少しでも思う方に向けて、心理学の理論に基づいた「モチベーションの公式」をお伝えします。
モチベーション≠テンション

「モチベーション」や「やる気」は、本人の気持ちや性格に起因する“感情”の問題だと捉えられがちです。好きな音楽を聴いて気分を上げたり、「頑張るぞ!」と気合を入れたり。というイメージです。しかし、残念ながらその効果は一時的なもので、持続的な行動には繋がりにくいのが現実です。
音楽を聴いて上がるのは「モチベーション」ではなく、一時的な気分の高揚、つまり「テンション」なのです。

実は、モチベーションは科学的に分析されており、特定の“公式”に当てはめて考えることで、誰でも高めることが可能なのです。心理学の理論に基づいた「モチベーションの公式」を紐解き、お子さんの「やる気」を引き出すための具体的な方法を、3つの要素に分けて徹底的に解説していきます。
モチベーションの正体とは? 〜すべての「やる気」を支配するたった一つの公式〜

まず、私たちがこれから活用していく「モチベーションの公式」をご紹介します。これは、心理学者のビクター・ブルームが提唱した『期待理論』という有名な理論がベースになっています。
彼の理論では、モチベーションを [努力] × [成果] × [報酬の魅力] という式で定義しました。これを、私たちにとってより直感的で分かりやすい言葉に置き換えたものが、以下の公式です。
モチベーション = [目標の魅力(やりたい)] × [達成可能性(できそう)] × [危機感(やらなきゃ)]
この公式で最も重要なポイントは、3つの要素が「掛け算」で成り立っているという点です。つまり、どれか一つでも「0」であれば、モチベーションの総量も「0」になってしまうのです。
例えば、
「医者になりたい!(やりたい=100)」と思っていても、
「自分には無理だ…(できそう=0)」と感じていれば、やる気は起きません。
また、
「この問題集なら解けそうだ!(できそう=100)」としても、
「別に解かなくても困らないし…(やらなきゃ=0)」という状況では、行動には移せません。
お子さんのやる気を引き出すには、この3つの要素をバランス良く、そしてもれなく高めていくアプローチが不可欠です。
それでは、ここから各要素を最大化するための具体的な方法を見ていきましょう。

第1の要素:[目標の魅力(やりたい)] を高める方法

最初の要素は、行動の源泉となる「やりたい」という気持ちです。これがなければ、そもそもエンジンがかかりません。
子どもが「やりたい」と思えない最大の原因は、目の前の学習が、自分にとって意味のない「ただの作業」に見えてしまっていることにあります。
この「作業」を「意味のある活動」に変えるためのアプローチは2つあります。
方法1:目の前の作業に「意味」を持たせる(内発的動機付け)
一つ目は、行動そのものに喜びや意義を見出す「内発的動機付け」です。その鍵は「目標の抽象度を上げること」にあります。
目の前の一つの点(作業)を、未来に繋がる線(物語)の一部として捉えさせてあげるのです。
具体例を見てみましょう。
Step 1:「この問題を解く!」
これだけでは、ただの作業です。
Step 2:「この問題を解いて、次のテストで80点を取る」
少し具体的になり、目先の目標が見えました。
Step 3:「この問題を解いて80点を取って、〇〇高校へ合格する」
中期的な目標と繋がり、意味が強まりました。
Step 4:「この問題を解いて80点を取って〇〇高校へ合格し、将来はゲームクリエイターになるんだ!」
自分の夢や理想の姿という、最終着地点と結びつきました。

ここまで繋がると、目の前のたった1問の計算問題が、「夢に続く道のりの、大切な一歩」という意味を持つようになります。これが、内発的な「やりたい」気持ちの源泉です。
とはいえ、「将来やりたいことがない」「行きたい高校が決まっていない」というお子さんも多いでしょう。その場合は、次のアプローチが有効です。
方法2:ゲーミフィケーションを活用する(外発的動機付け)
二つ目は、報酬や評価といった外部からの働きかけで意欲を引き出す「外発的動機付け」です。その代表的な手法が「ゲーミフィケーション」です。

ゲームがなぜあれほど人を夢中にさせるのか。それは、小さな目標(クエスト)をクリアするたびに、適切な報酬(アイテム、経験値、賞賛)が与えられるからです。この仕組みを学習に応用します。

報酬には大きく分けて2種類あります。
① 物理報酬
これは、お金やお菓子、ゲームの時間など、物質的な報酬です。短期的には効果がありますが、これに頼りすぎると「ご褒美がないとやらない」という状態に陥りやすいので注意が必要です。

② 感情報酬
こちらが特に重要です。感情報酬とは、人の根源的な欲求を満たす、心への働きかけです。具体的には、以下の4つの欲求に応える声かけが非常に効果的です。
貢献欲求 → 感謝の言葉
「(弟に)教えてくれてありがとう!助かったよ」
承認欲求 → 成果の評価
「テストで90点なんてすごい!頑張ったね!」
親和欲求 → 仲間意識
「難しい問題だけど、一緒に頑張ろう!」
成長欲求 → プロセス評価
「前より計算が速くなったね!できるようになったね!」
結果だけでなく、その過程にある小さな成長を見つけて言葉にしてあげること。これが、子どもが自ら「また頑張ろう」と思える、持続可能な「やりたい」気持ちを育みます。

第2の要素:[達成可能性(できそう)] を高める方法

次に重要なのが、「自分にもできそうだ」という感覚です。目標が高すぎたり、漠然としすぎていたりすると、人は一歩を踏み出す前に諦めてしまいます。
「できそう」感を高める鍵は、「目標を正しく設定し、現在地を正確に把握すること」です。
方法1:課題(問題)を細かく分解する
壮大な目標を、具体的な行動レベルまで分解していく作業が極めて重要です。
例えば、「プロ野球選手になる」という夢があったとします。このままでは、何をすべきか全く分かりません。これを次のように分解していきます。
目標とする選手を見つける
その選手の日々の行動(練習メニューなど)を知る
その選手のキャリアをたどる
〇〇高校に進学している
〇〇高校に進学するには?
偏差値が××必要
その偏差値を取るには?
定期試験で合計△△点が必要
その点数を取るには?
苦手な数学で〇点を上げる必要がある
数学で〇点を上げるには?
この問題集を3周解く必要がある
ここまで分解して初めて、「今日やるべきこと」が見えてきます。漠然とした不安が、具体的な行動計画に変わる瞬間です。

私たちマスリバティでは、この考え方を基に「ロードマップ」を作成します。目標点と生徒の現在地を分析し、解くべき問題のレベルと量を具体的に設定します。
問題レベルの選定:b(平均点レベル)〜 e(満点レベル)の4段階で、今の実力で「できる問題」に焦点を当てる。

「やらなくていいこと」の明確化:「レベルhとeは、今は解かなくていいよ」と伝えることで、完璧主義のプレッシャーから解放する。
現在地の確認:毎回確認テストを行い、「今できること」と「課題」を明確にする。
これにより、生徒は常に「これならできそうだ」と感じながら、着実にステップアップしていくことができます。
方法2:「Canリング」を広げるという考え方
もう一つ、「できそう」感を育む上で大切な考え方が「Canリング」です。
Canリング:その人が過去の努力によって積み上げてきた、「現時点でできること」の範囲。
Canリング内での失敗:これは単なる「ミス」。注意不足や練習不足が原因。
Canリングの外へ出ること:これが「チャレンジ」。
チャレンジした上での失敗:これは「ナイストライ」。賞賛されるべき行動。
この区別が非常に重要です。本来チャレンジであるべき難しい問題での失敗を、「ミス」として叱ってしまうと、子どもはチャレンジを恐れ、自分のCanリングの中に閉じこもってしまいます。

マスリバティでは、生徒のCanリング(過去の努力)を数値化し、実際の得点と比較します。
例えば、Canリングが「80点」の生徒が、テストで「60点」だった場合。 この差の20点は、チャレンジの結果ではなく「ミス」による失点です。
そうなると、今後の対策は「新しいことを学ぶ」のではなく、「いかにミスを減らすか」に集中すべきだと分かります。そして解答スピードを上げる、計算練習を積む、といった具体的な課題が見えてくるのです。
自分の「できる」範囲を正しく認識し、そこから半歩先の「チャレンジ」を促す。この繰り返しが、確かな「できそう」という感覚を育てます。
第3の要素:[危機感(やらなきゃ)] を高める方法

最後の要素は、行動を後押しする適度な「危機感」や「切迫感」です。
「やった方がいいのは、頭では分かってるんだけど…」 多くの人がこう感じて行動を先延ばしにしてしまうのは、人間が「限定合理的な感情人」だからです。論理や理屈だけでは動けず、「ちょっと、そこまででは...」と「時間が足りない」という言い訳の壁が立ちはだかります。
この壁を突破し、「やらなきゃ」を行動に移すための方法が2つあります。
方法1:約束する(覚悟の醸成)
最もシンプルで強力な方法が「約束」です。 心理学には「一貫性の原理」というものがあります。人は、一度自分が決定し、公言したことに対して、一貫した行動を取ろうとする習性があるのです。
誰かに「〇〇をやるよ」と宣言することで、「言ったからにはやらなきゃ」という良い意味での強制力が生まれます。これは、自分の中の「覚悟」を固める儀式とも言えます。

方法2:明確な〆切を作る(時間軸への意識)
「いつかやろう」は、永遠にやってきません。行動には「明確な〆切」が不可欠です。
ただし、一方的に〆切を押し付けるのは逆効果。「できなかった」という事実だけが残り、自己肯定感を下げてしまいます。 大切なのは、本人が「これならできる」と思えるラインを自分で決め、約束してもらうことです。これは、2番目の要素「できそう」とも密接に関わっています。
もし、自分で決めた約束をすぐに諦めてしまう場合は、「他人からどう見られたいか」という視点を加えてあげるのも有効です。「先生との約束だから守ろう」「友達にカッコ悪いところは見せられない」といった気持ちが、行動を後押ししてくれます。

マスリバティのロードマップでは、テスト日から逆算して具体的な〆切を一緒に設定します。
テスト2週間前:学校のワークを終わらせる(目的:苦手分野の発見)
テスト1週間前:苦手分野の克服に集中する(目的:弱点の克服)
テスト3日前:総復習と最終確認(目的:自信を持って本番に臨む)
このように、〆切に意味と目的を持たせることで、「やらなきゃ」という気持ちは、前向きなエネルギーへと変わっていくのです。

まとめ:モチベーションは、育てることができる

今回は、子どもの「やる気」を科学的に解明し、高めるための「モチベーションの公式」について解説しました。
モチベーション = [やりたい] × [できそう] × [やらなきゃ]
この3つの要素は、どれか一つが欠けても成立しません。
[やりたい]:目標の抽象度を上げ、ゲーミフィケーション(特に感情報酬)で意味と楽しさを見出す。
[できそう]:目標を細かく分解し、「Canリング」の考え方で現在地と課題を明確にする。
[やらなきゃ]:自分で「約束」と「〆切」を決めることで、覚悟と時間意識を醸成する。
モチベーションは、生まれつきの才能や性格ではありません。それは、正しい知識とアプローチによって、誰もが後天的に「育てていくことができるスキル」です。
もし今、お子さんのやる気のなさに悩んでいるのなら、まずはこの3つの要素のうち、何が「0」に近い状態なのかを観察してみてください。そして、今回ご紹介した方法の中から、一つでもご家庭で実践してみてください。
マスリバティでは、こうした科学的アプローチに基づき、一人ひとりの生徒が自らの力で未来を切り拓くためのサポートを全力で行っています。

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